7/19(金) 終業式

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 おはようございます。今日で1学期が終わります。今年は例年より梅雨入りが遅く、7月に入っても過ごしやすい日が続きました。しかし、これからどんどん暑くなっていくと思います。体調をしっかり整えて暑い夏休みを健康的に乗り切ってください。

 さて、今日はまず「寓話()」について話したいと思います。寓話とは、擬人化した動物などを主人公に、教訓や風刺を織りこんだ物語のことです。日本の寓話の元祖はイソップ物語で、これには、人々が生活の中で生きていくための知恵がたくさん詰まっています。イソップ物語の作者はアイソーポスという今から約2600年前に生きた人物です。アイソーポスの英語読みがイソップとなり日本で広まりました。皆さんも一度は読んだことがあるでしょう。

 イソップ物語が日本で広く親しまれるようになったのは、明治時代に英語版の翻訳として紹介され、小学校の教科書に取り入れられるようになってからです。この中にアリとキリギリスやウサギとカメの話がありました。ここで、アリとキリギリスの話しを少し思い出してみましょう。

 『夏の間、アリたちは冬の食料を蓄えるために働き続け、キリギリスはヴァイオリンを弾き、歌を歌って過ごします。やがて冬が来て、キリギリスは食べ物を探しますが見つからず、最後にアリたちに物乞いをし、食べ物を分けてもらおうとします。しかし、アリは「夏には歌っていたんだから、冬には踊ったらどうだい?」と食べ物を分けることを拒否し、キリギリスは飢え、死んでしまいます。』

 この物語は『苦痛や危険に遭わないためには、人はあらゆることにおいて不用意であってはならない』ということを説いています。この話が日本に紹介された時、最後の場面が少し変更されました。「アリは、怠けていたのはいけないことだと注意した上で、少しだけ食べ物を分け与える」という温情主義的に変わったのです。欧米の人達にこの話をすると「バカバカしい。それじゃ何のためにこの寓話を創る必要があるのか」と言うそうですが、当時の日本の人たちは、皮肉を言って追い返すという結末では、日本社会に受け入れられないと判断したのでしょう。日本人の和を尊ぶ習慣をよく反映していると思います。

 私たち人間の考え方というものは、自然や風土、伝統というものに強く影響を受けています。欧米の人達の「正義を守って事を進め、甘えは許さない」という考え方と、日本人の温情主義的な考え方、どちらが良いということではなく、その違いや違いの背景などをしっかりと理解することが大切です。今、その違いを超えて世界が一つになることが求められています。それがグローバル社会です。中・高校生の皆さんには、グローバルで多様な社会の中で生きていくために、ますますこのような力が求められます。夏休みにサイパンに行く中3の皆さん、2学期末にグアム・沖縄に行く高2の皆さんは、特にこのような点を意識し、学んで来てください。

 次に、関連したことをもう一つ。皆さんには、夏休み期間中に自分を律する力(セルフコントロール)を身につけて欲しいと思います。夏休みには、各教科の課題、課外、クラブ活動、学校行事、そして個人的にも色々な予定があると思いますが、一番大切なことは、この期間に、自分自身で取り組むべきテーマ、目標、そしてそれを達成するための具体的な方法を明確にすることです。特に中・高の3年生にとっては進路です。その実現・達成に向けて、生活・行動・時間の管理を自分自身で行ってください。人から言われるのではなく、自分自身でちゃんと管理できることが重要です。

 今日のふたつの話を簡潔にまとめて言えば、「自分がやるべきことをきちんと理解し、夏休みなどの余裕のある時に、しっかり将来に備えよ!」ということです。

 最後に、イソップ物語の作者であるアイソーポスの名言を一つ紹介します。

 「ある場所で不満を感じているものは、別の場所へ移っても、まず満足は得られない。」 今からおよそ2600年前の人物の言葉です。人間の本質は、今も昔もあまり変わりません。皆さんが、この言葉を毎日の生活の中で、上手にいかしてくれることを期待しています。