8/6(木) 1学期終業式
今日で1学期が終わります。1年生は、緊張の入学式から始まり、初めて出会う友だちとのかかわり、新しい勉強、そしてコロナの影響による長い休校と行事の変更など、慣れない学校生活の中での対応に少し疲れた1学期となったことでしょう。2年生、3年生も楽し みにしていた学校行事や部活の試合、大会がなくなってしまったことによる気持ちの切り替えは大変だったと思います。今年は、皆さんにとっても学校にとっても先の見えない、不安で大変な1学期でした。1学期を締めくくるにあたって、やはりコロナについて話しておかなくてはいけないと思います。 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、歴史上でも稀に見る出来事ですが、人類は これまでも同じような感染症によるパンデミックを何度か経験してきました。中世ヨーロ ッパの人口の1/3、当時の世界人口の1/4が命を落とした黒死病(ペスト)や第一次世界大戦末期に世界中で約5000万人が死亡したスペイン風邪などがその代表例です。人類は、その都度その困難を乗り越えてきました。今回も間もなくワクチンや治療薬が開発され、コロナの封じ込めはできると思いますが、それまでの間私たちはどのように生活していかなければいけないのでしょうか? ドイツのシュタインマイヤー大統領は、国民向けのスピーチで次のように言いました 。「新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、国と国、兵と兵が戦っている戦争ではな い。私たちの人間性が試されている。だから最高の姿を示そう」と。コロナに感染しない 、感染させないために、自分勝手な振る舞いをせず、他人を思いやり、自分の役割に誠実であること、さらにアフターコロナ時代をより良いものにするために、新しい生き方をみつけること。これはまさに、私たち一人ひとりが人間性のテストをされていると言えるでしょう。では、私たちは、この人間性のテストに合格するために今何をすべきなのでしょうか。 私たちがやるべきことを『守り』と『攻め』の2つの視点から考えてみました。過去に起きた ペストやスペイン風邪などのパンデミックを振り返ることによって、今何をするべきか多 くのヒントをみつけることができます。『守り』は過去から学ぶことができるのです。まずは、自分自身の守りとして、気を緩めないことが大事です。今では、「自粛に飽きた」「 コロナ疲れ」などの言葉も聞きますし、『Go toトラベルキャンペーン』で旅行に行く人、 レジャースポットや商業施設に行く人もいます。既に多くの人が自粛によるストレスを感じ、疲れがたまり始めていますが、そのストレスを身近な人にぶつけたり、他者を非難したりすることで解消しようとすることは、内側から『守り』を崩す行為になります。疲れている中で、どれだけ他者を思いやれるかが試されています。またある医療関係者は「感染症 と戦う唯一の方法は、誠実さだ」と言っています。医療現場の人たちは今、まさに誠実さ を持ってコロナと戦っています。医療関係者だけではありません。製造・物流・小売り・ 社会インフラに携わる人たちの誠実さなくしてステイ・ホームはできません。それぞれの 職種の人たちが、自分の仕事において、何ができるかを考えながら誠実に行動しています。 私たちも長期にわたり気を緩めず、疲れている状況でも誰も責めず、今できることを誠実に行う。これが、私たちがとるべき『守り』の姿勢です。 次に、『攻め方』は未来から考えましょう。私が言う攻め方とは、ワクチンや治療薬をつ くって直接コロナを打ち負かすことではなく、コロナによるマイナスをプラスにしていく ために、何ができるかを考えるということです。今、目の前で起きている出来事は、現時点の見方ではトラブルや問題としか考えられません。しかし「災い転じて福となす」ということわざのように、私たちの考え方や行動によって災難をうまく利用し、より良い状態にすることもできます。災いを福とするには、まず、状況に対して肯定的な見方をすることが 必要です。状況に対して「あー最悪だ」「困った」「早くこの状況が変わらないかなあ」 と受け身で否定ばかりするのではなく、「せっかくだから何かできないかな?」と物事を肯定的に見ることが大切です。例えば、「外出自粛だ。どこにも行けない。これは困った 」を「外出自粛だ。ちょうどよかった!家の片づけをしよう!」と考えてみると、普段で きなかったことや気づかなかったこと、さらには「ついでに、ここもやっておこう!」と 新しい発想やアイデアが生まれてきます。家族全員が家にいることが多い今、家事の役割 分担を決めたり、思い切った片付けをしたりするなど、より快適な家庭環境にするチャン スです。仕事で言えば、無駄な会議や承認プロセスを見直すなど、今まで変えられなかっ た働き方を大きく変えるチャンスです。ここで「それは無理でしょう」とか「今までのやり方を変えるのはちょっと......」と否定ばかりしてしまうと、災いをただやり過ごすだけになってしまいます。コロナ禍をきっかけに上昇気流に乗るか、下降気流に乗って落ちてしまうかは、この考え方次第だと思います。外出自粛という状況をチャンスと捉えれば、他にもいろいろなことが考えられるでしょう。このような状況だからこそ、変えるべきこと をしっかりと変えておけば、未来はさらに生きやすくなり、もしかするとコロナ後の世界 は、コロナ前より輝く世界になるかもしれません。これがコロナ時代の『攻め方』だと思います。 過去から学ぶ『守り』の思考と、未来を作り出す『攻め』の思考で、今何をすべきかを考え、私たちが試されている人間性のテストにみんなで合格していきましょう。 参考までに、1冊の本を紹介します。フランスのノーベル文学賞作家アルベール・カミューが書いた小説『ペスト』です。この物語は、フランスの 植民地であったアルジェリアのオラン市をペストが襲い、苦境の中、団結する民衆たちの姿を描いています。医者、市民、 よそ者、逃亡者と、登場人物はさまざまですが、民衆を襲うペストの脅威に、全員で助け あいながら立ち向かっていきます。 今、コロナとどう向き合えばよいかを考えている私たちが読んでおくべき本だと思いま す。 最後に、高3の生徒に伝えておきます。このような状況の中でも、夏休みを利用してしっ かり進路について考え、準備をしてください。今は、希望する進路先のオープンキャンパスに参加し、直接学校の様子を見ることができないかもしれませんが、できる限りの手段 を使って情報を収集し、自らの考えをもとに保護者や先生方としっかり相談して、最後は自分の責任において進路を決定してください。そして進路先の傾向と対策を考えながら学習してください。言い訳はできません。今できることをしっかりやりましょう。
- by Hagikoen
- at 2020年08月06日