3/18(金) 3学期終業式

おはようございます。早いもので、今日で一年が終わります。2月28日には高3が、3月12日には中3が、この学校を巣立って行きました。多くの制限があった卒業式でしたが、皆さんの協力のおかげで素晴らし卒業式になりました。ありがとうございます。
みなさんにとって、令和3年度はどんな1年だったでしょうか。中1・高1の皆さんは、光塩に入学し、それまでの学校生活との違いを感じたことでしょう。中2・高2の皆さんは、自分の夢の方向を定めるのに苦労した一年だったのではないでしょうか。はっきり言えば、今年度もコロナに振り回され、計画どおり進まなかった一年でした。そんな中でも、その時最適と思われる工夫や変更を繰り返し、乗り越えてきましたが、皆さんも多くのストレスや窮屈さを感じながら、それぞれの目標に向かって日々取り組んできた一年だったと思います。来年度こそは、コロナが収束し、勉強も学校行事も部活動も通常どおり実施でき、皆さんの若い力を思いっきり爆発させて欲しいと思っています。
さて、今日は、一年の締めくくりとして、電気機器メーカーSONYの創業者の一人である井深大(いぶかまさる)さんの話をしたいと思います。敏感な人、私の話しをよく聞いている人はすぐピンときたと思いますが、2学期の終業式では、パナソニックの創業者松下幸之助さんの話をしました。今年度の私の話しは、皆さんの身の周りに必ずある日本を代表する世界的な電気機器メーカーの創業者の話しばかりです。私が、電気機器メーカーが好きだとか、創業者に憧れているとかいう理由からではありません。何かを成し遂げた人は、それまでの多くの失敗や挫折の中から、自分なりの考えを見つけ、決してぶれない信念を持って行動していました。そして、その考えを後世の人にしっかりと伝えています。皆さんには、毎日の生活の中で、PanasonicやSONYの電化製品を見たら、私の話しを思い出し、自分の生き方の参考にして欲しいと思っています。また私は、今年度の高校・中学校の卒業式の式辞の中で、この井深さんの考えから学んだことをメッセージとして伝えました。同じことを皆さんにも再度伝えたいと思います。
井深大さんは、盛田昭夫さんとともにソニーの創業者として知られ、1950年に日本初のテープレコーダーを開発、発売しました。その5年後に日本初のトランジスターラジオを開発し、1979年にウォークマンの発売によりソニーを世界的大企業に育て上げました。井深さんが残した言葉はたくさんありますが、まず皆さんに伝えたいのは、「ハイテク化すればするほど、人間と人間の関係が非常に重要になり、人と本当にうまくやっていける人間が必要となってくるんです。21世紀になったら人間とか愛情とかいうものがますます重要なファクターになってくると思うので、自分に磨きをかけ、人との関係を大切に心がけていく必要があると思います」「物理も化学もすべてそういうものは道具と考えると、必要なときに勉強しても遅くはないけれども、哲学とか信念とかいったものはなかなかおいそれとは育たない」という言葉です。
これらの言葉は今から30年以上前にソニーの社内報で紹介されたもので、そこには、大事なことは技術そのものではなく、技術を支える哲学である。言い換えれば人間一人ひとりの深い考え方にあるという思いが込められています。井深さんは少年期に無線などに凝り、早稲田大学理工学部時代にすでに発明家としての頭角を現していました。根っからの技術者でしたが、革新者として傑出した才能を発揮できたのは、感性が豊かであったからだと言われています。井深さんは、企業経営の傍ら1972年にソニー教育振興財団を設立し、理事長として幼児教育に深く関わってこられました。その頃には、こう言われていたそうです。「私も当初、間違えていました。早く字や算数などを教えるのが大事だと思っていましたが、本当は心をいちばん先に教えなくてはいけないのです」と。その後も発明協会の会長など多くの団体の役職を歴任され、84歳で産業人として初の文化勲章を受章し、21世紀の状況を見据えながら1997年に89歳で亡くなられました。
現在、IT技術の発展は目覚ましく、AI技術は様々な仕事にも応用できるまで発展してきました。しかし、皆さんがこれからの社会を生き抜く為に必要な能力とは、AIがまだまだできていない、人と人とのかかわりの中で、相手の気持ちを感じとり、コミュニケーションをとったり、交渉したりする力だと思います。根っからの技術者であり、その分野で活躍し、功績を残してきた井深さんが「時代がどんなに変わってハイテク化されても、やっぱり感情や愛情といった人としての心や考え方が大切だ」と言われているのです。

中学・高校生活の中で、これからもっともっと多くのことを学んでいく皆さんですが、まずは、このことを大事にしてください。
井深さんは、若い人たちにもメッセージを残されています。それは、「一つは、自分自身を大切にすること。自分を生かすということと合わせて、それと同じくらいのウエイトで、他人のために、社会のために何かできることはないか、ということを考えて欲しい。また、そういう気持ちを、ぜひ持って欲しいということです。もう一つは、しっかりとした生きるよりどころを、ぜひ持ってもらいたい」というものです
中高生の皆さんには、自分の力に自信を持ち、じっと待つのではなく自らが積極的に求めなければ、何も手に入れることはできないということを、今一度、理解して欲しいと思っています。自分の進むべき先をしっかりと捉え、自分の可能性を信じ、来年度、力強くスタートしてくれることを大いに期待しています。