5/27(金) 朝礼のことば

今日5月27日は「百人一首の日」です。1235年、藤原定家によって小倉百人一首が完成された 日とされています。また、明日28日は「在原業平の命日」としてこちらも記念日に制定されています。 そこで、今日はこの在原業平についてお話ししたいと思います。 在原業平という人物を知っていますか?高校2・3年生の皆さんは、私が授業で教えた人もいるので もちろん覚えていますよね?まだ習ったことのない人、忘れてしまった人のために少し紹介します。 在原業平は今から約1100年前の平安時代に活躍した歌人です。六歌仙の1人で、日本最初の勅撰 集である『古今和歌集』に30首も収録されている和歌の名手です。また、百人一首では、マンガ・ア ニメなどでも話題になり、現在クラスに原画展のチラシが掲示されている「ちはやふる」の歌を詠んだ ことでも有名です。天皇家の生まれでありながら、しきたりに捉われず、公的な漢文よりも自由に創作 意欲をかき立てる和歌に深く興味を持っていたといわれています。そして、情熱的で恋多き色男のよう な印象で語られることが多く、『伊勢物語』の東下りの段では、その恋愛観ゆえに現代では疑問を持たれ てしまいそうな一面もあります。 しかし、彼の和歌を詠むと、やはり彼の学問に対する意識の高さは並外れたものであったことを深く 感じることができます。 この東下りの段で詠まれている からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ という有名な歌があります。この歌は、そこに咲くかきつばたになぞらえて旅の思いを即興で詠んだと いうものです。もちろん物語なので、この歌は後々考えられたのかもしれませんが、和歌の技巧をほぼ 全て取り入れられている上に、情景も鮮明に描かれており、在原業平が和歌の名手であることを説明す るのに最もふさわしい一首であると思います。 また、在原業平がしきたりを重んじないため漢文を学ばず、和歌を好んだと言いましたが、本当にそ うなのでしょうか。 和歌には、決まり事が多く字数にも制限があります。限られた中で自分の感情の無駄な部分を省き「か きつばた」の歌のように、ルールも最大限に生かしながら創作する彼は、実は誠実で真面目で勤勉だっ たのではないでしょうか。 千年の時を超えてもなお語り継がれる在原業平が、ただの色男で歌が上手いだけでは歴史に残ること はないと思います。私たちが見ている彼の姿は、作品を通して見えるわずかな部分だけです。本当にそ の人を知ろうとするには興味を持って深く調べ、関わることが大切だと思います。そのときに彼の本当 の姿が見えてくるのではないでしょうか? これは現在の私たちの関わりにも同じことが言えるのではないかと思います。私たちは、他者のこと をどれくらい知っているでしょうか?友達、先生、家族、さまざまな人と関わって生きていますが、そ の人たちのことをどれくらい知っていますか。もちろん、見えている印象も大切かもしれません。しか し、もしかしたらそうではない一面が隠れているかもしれません。そう考えながら関わりを深めていく と、今までと違った発見があるかもしれません。 発見を増やすことで、今までと違う関係が築け、意外な喜びを見つけることができるかもしれません。 周りの人の素敵な一面を見つけてみませんか?