10/28(金) 朝礼のことば

みなさん、おはようございます。今年はミニ四駆が販売を開始して40年の節目の年です。ミニ四駆はシンプルな構造ゆえに奥深いレーシングカーの模型であり、現在世界中で幅広い年代の人々に楽しまれています。

 そしてこの40年の間に名車と呼ばれるものが数多く生まれましたが、中でも「ライジングバード」というマシーンは私にとって特別な一台です。ボディのデザインがそれまで主流だったバギースタイルとは一線を画し、どこかヒーローものの戦闘機を彷彿させ、真っ赤なシャーシとタイヤのインパクトと相まって、まさに子供たちの夢や理想に形が与えられたスペシャリティカーでした。「ライジングバード」が登場した当時、小学六年生だった私は、「とんでもないものが出てきたなあ」と非常に興奮したことを今でもはっきりと覚えています。

 ところで「ライジングバード」は車体後方に伸びる大きな翼が原因でボディが重たく、また風の影響を受けやすいため、時に走行が不安定になるという欠点もありました。つまり格好良さは理想的であっても、必ずしも現実のレースに向いているわけではなかったのです。

 では「ライジングバード」は欠陥車だったのでしょうか。実は設計担当者の涙ぐましい努力によって、理想の形を損なうことなく、欠点を克服する工夫もされていました。車体を地面に押しつける力のことをダウンフォースと言います。そのダウンフォースを作り出す第二の翼が追加され、安定した走りができるようになっていたのです。このことから私は、途中であきらめることなく問題解決を図る姿勢が本当に大切なのだと実感ました。

 理想と現実との間に時に大きな隔たりがあり、その差を一朝一夕には埋めることができないこともしばしばあります。しかし、「どうして自分の思った通りにいかないのか」と思い悩むよりも、「どうやったらうまくいくだろうか」と前向きに考えるほうが、理想の実現に近づくのではないでしょうか。小さなミニ四駆から貴重な気づきがあったことは、今では私にとって大きな財産となっています。