朝礼のお話
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6/25(水) 朝礼のことば
先週の土曜日、中学校の英語スピーチコンテストが行われました。毎年、1年生は自己紹介、2年生は物語の暗唱、3年生は自作のスピーチを英語で披露します。英語が得意な人もそうでない人も、人前での発表が得意な人もそうでない人も、全校生徒一人ひとりが約100名の観客の前で発表します。おそらく、大半の人が気が進まず、「やらされている感」が強かったのではないでしょうか?海外留学するわけでもないのに、何で全員が英語スピーチをしなければいけないのでしょうか?これは、英語の知識を習得するだけの行事ではありません。苦手なこと、嫌なことからも逃げ出さずに、最後までやり遂げる力を身につける場だと思います。今年、ある卒業生が、「当時、英語スピーチコンテストは嫌だ嫌だと思っていたけれど、周りの人たちに協力してもらって必死に覚え、3年間やり遂げた。そのおかげで、何事にも全力で取り組むことのできる強い心がもて、それが自分の長所になった。」と話してくれました。中学生の皆さん、今回のスピーチでその力はつきましたか? これは学校行事だけでなく、日々の学習でも同じことが言えます。先日、私はある中学校の授業見学に行きました。数学の授業で、内容は「平方根を含む式の展開」でした。黒板に映し出されている問題を見て、「あれ、どうやって解くんだったっけ?」と思うものもありましたが、先生の説明を聞くうちに記憶が蘇り、問題を解くことができました。中3で習って以来、1度も平方根の計算なんてしたことないから、忘れても当然だと思いました。では、なぜ平方根を含む式の展開なんて習うのでしょう?その先生は、私の心を見透かしたように、次のように言われました。「おそらく、皆さんが社会に出て、今勉強している内容、平方根の計算を使うということはないでしょう。では、なぜこんな勉強をするのか?公式に当てはめて丁寧に展開していく。そうすることで、頭の中を整理し、筋道を立てて物事を考える力を身につけているのです。筋道を立てて物事を考える。それは大人になってからも大切な力です。」と。 一見、将来、役に立つのか分からないように思える勉強や学校行事も、無駄なことは一つもなく、皆さんの将来に繋がっていると思います。皆さんは、学校生活を通して、知識や技術だけでなく、社会に出たときに求められる力、必要な力を身につけているのです。そして、その力は、例えば自分が得意な数学でも、面倒くさい計算から逃げていては、身につきません。また、得意とするスポーツでも、嫌な基礎練習から逃げていては、その力は身につきません。嫌なこと、苦手なことからも逃げ出さずに根気強く続け、壁を越えたときに、その力が身につき、成長できるのだと思います。今はそれを感じることができなくても、何年か先に、学生時代を振り返った時、光塩で経験したあの出来事が今の自分に生かされていると感じてもらえたら嬉しいです。 今週の土曜日は、文化祭です。「楽しかった。」「面白かった。」だけでなく、この行事を通して、皆さんはどんな力を身につけますか?
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6/18(水) 朝礼のことば
今日6月18日は何の日かご存じですか。なんと今日は「おにぎりの日」なんです。だから、今日は私がお話しする日なのかと思いました。という冗談はさておき、なぜ「おにぎりの日」に制定されたかというと、石川県の旧鹿西町(現中能登町)で、弥生時代のおにぎりの化石が発見され、日本最古のおにぎりとして認定され、発見場所の鹿西町の「6」と、毎月18日が「米食の日」とされていることから、今日が「おにぎりの日」となったそうです。また、これとは別に、おむすびの日という記念日があり、こちらは1月17日だそうです。これは阪神淡路大震災の時に炊き出しで、たくさんのおむすびが被災者の方に振る舞われ、その災害の重さを忘れないようにと制定されたものです。 さて、日本に住む私たちにとって、このお米は、切っても切り離せない大切な主食ではないでしょうか。現在ニュースで、米の値段高騰の話や、備蓄米放出の話を聞かない日はないと思います。近年は米離れが進んでいるというニュースや、糖質ダイエットの一環で米を食べない人が増えているという話も聞きますが、これはごく一部の話題にすぎません。農水省の調査では、令和6年の米の生産量は734万トンと発表されています。また、この度放出された備蓄米は先週までの調べで約60万トンといわれています。さらに、令和3年の農水省調べによる、一人当たりの米消費量は年間で51.5キログラム。つまり、総人口で考えると約570万トンの米が消費されていることになります。このように、膨大な量のお米が日本では流通しており、私たちの生活に欠かせないものであることがわかると思います。 皆さんは、どのようにしてこの米が生産されているかご存じですか。農家の人たちが汗水たらして一生懸命育ててくださっていることは何となく理解できるでしょうが、その細かな工程を知らない人も多いと思います。米という漢字を思い浮かべてみてください。米を分解すると八十八という漢字に分けられます。これは米作りが八十八工程の作業からできているためといわれています。実際にはそれよりも多いかもしれませんが、3月の種まきから9月の刈入・出荷まで、ひと時も休みのないと言われている農家の方への感謝を、決して忘れてはいけません。これだけの苦労をしても、米の値段が上がらなければ、近年高騰する物価に農家の収入が追い付かなくなってしまうことは、理解できると思います。消費者である私たちにとって米の値段の上昇は辛いことですが、せっかく話題になっているので、この機会に生産者の思いについても考えてみるとよいかもしれません。大型機械の導入や、品種改良の技術の向上、肥料の開発などにより、昔よりはるかに生産工程が軽減されましたが、それでもなお、農家の八十八工程は形を変えつつも、残っています。コンビニやお弁当で手軽に食べられるおにぎりですが、奥が深いと思いませんか。3000年前に日本に伝来して以来、私たちの生活を支えてきた米、そしておにぎりについて、ぜひ関心を持ってみてください。
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6/11(水) 朝礼のことば
おはようございます。 まず、皆さんに質問です。 朝起きて、最初に手に取るものって、何でしょうか? おそらく、多くの人が「スマホ」と答えるんじゃないかと思います。 私もその一人でした。 スマホのアラームで目覚ましをかけているし、目が覚めたらなんとなく画面を見て、気づいたらもう5分、10分と経ってしまいます。 スマホは、本当に便利な道具です。 友達とつながれるし、音楽も聴けるし、いろんな情報もすぐ手に入れることもできます。 しかし、使い方によっては、「大切な時間」や「心の余裕」を、じわじわと削ってしまうこともあると思います。 今日はそんなスマホとの付き合い方、「デジタルデトックス」という考え方について、皆さんと共有したいと思います。 この「デジタルデトックス」というのは、スマホやタブレットなどのデジタル機器を使わない時間を作ることです。 私が最初に始めたのは、「寝る前30分はスマホを見ないようにする」というものでした。 これは本当に難しく、ついついスマホに手が伸びてしまったり、ちょっと落ち着かなくなったりしました。 いわゆる「スマホ依存」という状態なのだと思います。 ストレッチをしてみたり、散歩をしてみたり、アロマを香らせてみたり・・・試行錯誤をして、 なんとか1週間ほど続けてみると、変化がありました。 まず、眠りが深くなったように感じました。 そのおかげか、朝もすっきりと目が覚めるようになり、なんとなく触っていた朝のスマホもやめることができました。 そして何より、スマホを置いている時間、 ふと「自分の気持ち」に気づくことが増えたように思います。 「あ、今日ちょっと疲れてるな」とか、 「これをゆっくり考えたかったんだな」とか。 スマホの中の世界から一方的に情報を与えられていた状態から離れることで、 自分の些細な変化に少し向き合える時間ができたような気がしました。 スマホは、便利で楽しいものです。 でも、気づかないうちにスマホに支配されていないでしょうか。 そんな自分を感じて、違う自分を知るための時間を、意識的につくってみてください。 まずは、今日の感想に自分のスマホ習慣を振り返ってみてください。そして、どこからデトックスできるか考えてみてください。
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6/4(水)朝礼のことば
新年度が始まって2ヶ月が経ちました。新年度になり、新しい友達や環境に出会い、いろんな体験を通してお互いを知り、かかわりを深めてきたことでしょう。今まで知らなかった友達の新しい一面に気づいた人もいるかもしれません。 今月のテーマは「ゆるし」です。4月のテーマ「出会い」からはじまり、5月の「かかわり」を通して、6月の「ゆるし」につながっています。これまでの先生方の話を聞いてみなさんが書いた感想をもう一度振り返ってみてください。 さて、みなさんは、これまでは普通に友だちとして付き合ってきたのに、何気ない言葉や行動によってその人のことが嫌いになってしまったという経験はありませんか。人は、いいことよりも 嫌なこと、悲しいことの方が印象に残りやすくなっているそうです。ある心理学者は、「人間関係を成功させるためには相手との良い交流が、悪い交流を上回ってなくてはならない。その比率は良い交流5回に対し、悪い交流1回」と言っています。つまり、これまで相手からいいことやうれしいことを5回されていても、たった1回、嫌なことをされてしまうと、その人のことが嫌いだとか、もう関わりたくないと感じてしまい、これまでの関係が壊れてしまうこともあるということです。おそらく多くの人がそのような経験があるのではないでしょうか。 嫌な思いをさせられたとき、その人のことがゆるせないと思うこともあるでしょう。それはそれで仕方のないことだと思います。ただ、そこで、もう関わらないと全否定するのではなく、その人の良いところを思い出してみてください。これまでかかわってきた中でその人に助けられたこと、楽しかったこともあるはずです。逆に、相手に嫌な思いをさせてしまった人は、その人のために5回と言わず、何度でもその人にとって良いと思うことをしてみましょう。人は誰でも良いところもあれば、ダメなところもあります。あなた自身もそうです。それを受け入れることができれば、相手をゆるすこともでき、いい関係が築けるようになると思いませんか。 6月は文化祭があります。クラスや部活動などでみんなと協力して活動することも多くなります。その準備の中で意見がぶつかることもあるかもしれません。しかし行事を成功させたい思いはみんな同じはずです。互いの意見を認め合い、尊重することを忘れず、最後にはみんなで成し遂げたという「喜び」を感じられる月にしましょう。
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5/29(木) 朝礼のことば
おはようございます。 今日は「見える色、感じる心」をテーマに話をします。 みなさん、虹といえば何色を思い浮かべますか?日本では「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の7色と教わりますよね。 でも実は、国によって虹の色の数や見え方は違うのです。アメリカやイギリスの人々は6色、ドイツや中国の人々は5色。アフリカの一部の民族の人々では、3色や4色、2色と表現するようです。 見る人の文化や感性によって、同じ虹でも違って見える…それって、とても不思議で、おもしろいですよね。 日本には、「日本伝統色」と呼ばれる日本特有の色が、約500色もあるといわれています。桜色、茜色、紅葉色…。 こうした色の名前には、自然の風景や季節のうつろいが込められています。 たとえば「桜色」は、春のやわらかい陽ざしに透ける花びらの色。 「茜色」は、夕焼け空がゆっくり沈んでいくときの、あの赤みがかった空の色。 日本には他にももっと繊細な名前の色がたくさんあります。 「朽葉色(くちばいろ)」は、秋の終わりに落ちた、ちょっと枯れかけた葉っぱの色。 「梅鼠(うめねず)」は、うっすら赤みを帯びた、灰色のような曖昧な色。 「利休茶(りきゅうちゃ)」は、侘び寂びの精神を映すような、落ち着いた茶色。 「藍色(あいいろ)」。藍という植物からとれる、深くて落ち着いた青は、着物やのれん、野良着など、さまざまな暮らしの場面で使われてきました。葛飾北斎をはじめとする浮世絵師にも愛され、海外でも評価され、「ジャパンブルー」と呼ばれることもあります。 「きつね色」「、ねずみ色」のように、生き物にちなんだ名前の色や市川團十郎にちなんだ「團十郎茶(だんじゅうろうちゃ)」という茶色も存在します。 どれも、ひと目でわかる派手な色ではありません。しかし、日本人はこういう目立たない色にさえ、美しさを感じて、名前をつけてきました。それだけ、自然の中にある微妙な色の違いを見つけ、名前をつけ、心で感じてきたということです。 たとえば、風鈴の音に夏を感じたり、雨のにおいや音に、ふと心が落ち着いたり。鳥のさえずり、虫の声、風が木を揺らす「さわさわ」という音。そして、夕日に染まる空を見て「きれいだな」と感じる気持ち。それが、「感性」です。感性は、心を少し澄ませることで、磨かれていきます。「なんか好き」「美しい」「なんだか心が惹かれる」「この瞬間が心地いい」そんな気持ちを、見過ごさず、大切にしてほしいと思います。それは物だけでなく、色、音、光、におい——日常にあふれる自然の中にある“美しさ”に気づき、感じることができる人でいてほしい。そう願います。