おはようございます。もうすぐ夏休みですね。毎日暑い日が続いています。
私は、夏の強い日差しを浴びるたびに1冊の絵本を思い出します。『かたあしだちょうのエルフ』という絵本です。萩光塩学院小学校の図書室にその絵本はありました。当時、図書室の先生をしておられた山口清先生に薦められて読んだ絵本です。『かたあしだちょうのエルフ』は、『バーバパパ』や『はらぺこあおむし』のような明るくポップな絵本ではなく、アフリカの乾いた砂地のような背景に動物たちの黒い影が躍動する、少し渋めの絵本でした。きっと薦められなかったら手に取ることはなかったでしょう。山口先生に薦められる本はいつも素敵でした。
だちょうのエルフは、動物の子供たちと遊ぶことが大好きでした。しかし、ある日ライオンに片足を食いちぎられ歩けなくなります。ただそこに立っていることしかできなくなったエルフが最後にできたこと。それは小さな動物たちのために木陰を作ることでした。小学校三年生だったか四年生だったか忘れましたが、夏休みにこの絵本を読み、私は、私の足元にできた「影」にやすらぎを求めにくるものの存在を確かめずにはいられませんでした。
今年の四月、大阪で開催されている、建築家・安藤忠雄さんの個展に行く機会を得ました。
「くっきりとコンクリートに描かれる光の道に比例する、影」
これはそのときに私が詠んだ短歌です。安藤さんが設計した代表的な建物の中に、「光の教会」があります。打ちっぱなしのコンクリートの壁に開けられた、十字架型の窓から差し込む光は、そのまま光の十字架となり礼拝堂を照らします。大阪の個展のイベントでは、映像技術を駆使して「光の教会」が再現されていました。その圧倒的な光を浴びながら、私は、光が強ければ強いほど影が濃い、ということを実感しました。
「人間にとっての幸せは、光の下にいることではないと思う」安藤忠雄さんの言葉です。決して「影」の中にいなさい、ということではありません。この言葉には続きがあります。「光を遠くに見据えてそれに向かって懸命に走っている、無我夢中の時間の中にこそ人生の充実があると思う。」安藤さんは、高校時代、17歳でプロボクサーとなります。ボクサー引退後は、大学に進学せず、独学で一級建築士の資格を取得します。そして世界的に有名な建築家となりました。83歳の現在、安藤さんは子供たちの未来に希望の光を求め、子供たちが自由に本を読むことのできる「こども本の森」という施設の建設に力を注いでおられます。現在国内に五か所あります。窓から光がさんさんと差し込み、壁一面に本が並び、子供たちが自由に本を読める場所です。それは、だちょうのエルフがつくった木陰のようです。できれば、今年か来年の夏には、「こども本の森」に行ってみたいなあと思っています。
明後日から夏休みです。受験や部活で忙しい人も、ぜひ、自分の木陰を見つけて本を読んでみてはいかがですか?